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以前、「米粉アンバサダーに就任するまでは米粉をあまり使ったことがなかった」とお話されていましたが、この取り組みを通してどんな気付きがありましたか?

「できたてのデセールを提供するアシェットデセールの専門店としては、たくさんの発見がありました。蒸したてならではのお米らしい香りや焼きたての食感など、米粉にしか出せないおいしさがすごく魅力的ですね。何よりも、お客さまからとても好評なんですよ」。

具体的に、お客さまからはどんな反応が?

「『サクサクとした食感がおもしろい』というお声が多かったですね。召し上がっていただく際にお米や米粉の作り手についても説明させていただいたんですが、今後の日本における農作物、食料自給率といった視点から米粉に興味を持ってくださった方もいらっしゃいました」。

山本パティシエは山椒や味噌、漬物などの日本食材を使い「日本でしか表現できないフランス菓子」をテーマにお菓子作りをされていますよね。そのうえで、米粉のどんなところに魅力を感じますか。

「米粉は日本で昔から食べられているお米が原料というのもあり、当店で使うことに大きな意味がありますし、本当にいいご縁をいただきました。僕は和食材によるデセールを日本から世界に発信するという目標を掲げているんですが、米粉はその可能性をより広げてくれそうです」。

フランス菓子に落とし込むにあたっての、米粉の魅力は?

「日本人にとってお米は主食ですから、お米自体をデセールに使うと違和感を感じる方も多いと思うんです。でも米粉であれば粉になっている状態なので、レシピに取り入れたときにいい意味で主張しすぎず、受け入れていただきやすいかなと。あまりクセがないため、比較的いろんな食材との組み合わせが効きますし、甘いものから甘じょっぱいものにも使えるのがいいですね」。

「Dessert&Wine 西洋茶屋 山本」は、デセールをワインや日本酒とのペアリングコースで楽しめるんですよね。お酒と合わせるという視点で見た、米粉のよさは?

「もとがお米なので、日本酒や焼酎など、ワイン以外のお酒ともマッチしやすいところ。ワインがメインではありますが、米粉のデセールをコースに組み込むことによって、より多彩なペアリングが実現しました」。

コースを構成するうえで大切にされていることも教えてください。

「口の中が重くならずに最後までおいしく召し上がっていただけるよう、塩味、苦味、酸味をバランスよく組み込んでいます。甘くなりすぎないようにハーブやスパイス、温度差を使うなどの工夫もしています」。

デセールを作りながら感じた、米粉ならではの部分はどんなところでしょうか。

「まだ未知なところが多いものの、やはり小麦粉とは香りの出方が違いますし、香り自体もふんわりと優しい。食感で言えば、焼いたときのホロホロっとした仕上がりや蒸したときのもちもち感は米粉ならではだと感じます」。

今後、米粉を使用してどんなデセールを作ってみたいですか?

「これまでの店舗メニューや家庭用レシピの開発では、小麦粉などの代用としてレシピを考えていたので、米粉が持つ性質でしか作ることができないデセールに挑戦してみたいですね。いちから開発するのは、なかなかハードルが高そうですが……(笑)」。

そのために、現在はどんな取り組みをされていますか。

「調理法や相性のいい食材を考えるのはもちろん、米粉という素材が持つ性質をじっくり研究しながら、できたてのデセールで生きる使いかたを探求しています。米粉アンバサダーに就任してからお米農家さんとの出会いもあったので、作り手さんたちとの繋がりも大切にしながら、これまでにない米粉のデセールを模索していきたいと思います」。

山本智弘 氏

製菓専門学校を卒業後、神戸・北野にあるチョコレートを得意とするパティスリー「L‘AVENUE」(ラヴニュー)をはじめ、本場フランス、ホテルなどで経験を積んだ。その後はミシュランガイド京都・大阪+鳥取 2019にて一つ星に輝いたフランス料理・京都「MOTOI」(モトイ)でシェフパティシエとして活躍。 2018年「Dessert&Wine 西洋茶屋 山本」を開業。2022年開催の日本最大級の料理人コンペティションRED U-35で「シルバーエッグ」を受賞。

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