山本さんは製菓学校を卒業されてから、日本とフランスで修業されたそうですね。
「地元のケーキ店に勤めてから、フランスの5つ星ホテルに入ったんです。帰国後はチョコレート世界大会で優勝した平井茂雄シェフの洋菓子店『L'AVENUE(ラヴニュー)』を経て、前田元シェフ率いる京都のフレンチ『Restaurant MOTOÏ(レストラン もとい)』に務めました」。
なぜ洋菓子店からフレンチへ?
「日本の素材を使った、日本でしか表現できないフランス菓子をつくりたいと思ったのが理由でした。そこで日本の素材が豊富な土地といえば京都だろうと思い、京都のフレンチに移りました。『Restaurant MOTOÏ』でシェフパティシエとして和のエッセンスを込めたデザートをつくらせていただいた経験は、いまのお店づくりにも役立っていますね」。
そして5年前にアシェットデセール専門店「西洋茶屋 山本」をオープンされました。デザートをコーススタイルで提供されていますが、どのようにコースを組み立てているのでしょう?
「口の中が重くならないよう、ハーブやスパイスを効かせて味のバランスを取ったり、温度差を用いてメリハリをつけていますね。例を挙げるなら、ボイルしたメレンゲに山椒を入れたり、ケークサレに漬物を入れたりだとか」。
ワインとのペアリングで楽しめるんですよね。ペアリングにこだわった理由は?
「レストランのコース料理をペアリングと楽しむのは、いまやスタンダードですよね。それぞれの料理を相性のいいお酒と合わせることで、初めて作り手が表現したいその一皿のおいしさが完成する。デセールも同じように、ペアリングすることで完成度を上げたいと思いました」。
ペアリングするワインはどういった視点で選んでいますか?
「香りや産地、風土などの共通項からチョイスします。ワインからブラックベリーや梨などの香りが感じられたら同じフルーツと合わせたりしています」。
米粉フェアメニューの「白醤油のプリン 米粉のシュトロイゼルを添えて」と「大吟醸のソルベと米粉のメレンゲのヴァシュラン」も、日本らしい一皿ですね。
「米粉というテーマに合う素材として、白醤油と大吟醸を選びました。白醤油のプリンに添えたシュトロイゼルは、米粉でつくってみたら小麦粉以上にサクサク感が出たんですよ。サクッと軽やかでほろほろ崩れる繊細さは、米粉ならではだと感じましたね。なめらかなプリンの甘さのあとに、シュトロイゼルや白醤油の塩味をしっかり感じていただけます」。
大吟醸のソルベに合わせた米粉のメレンゲは、また違った香ばしさを感じました。
「ヴァシュランは焼いたメレンゲにアイスクリームやフルーツなどを合わせるデセールなんですが、まず米粉の原料であるお米に合う素材として大吟醸が浮かび、ヴァシュランとして仕立てるに至りました。お米のメレンゲは130度で1時間じっくり焼き、おこげのような香ばしさを出しています。なので後味がほんのりと香ばしいんですよ」。
大吟醸のソルベは、なかなかお酒が効いていますね。
「アイスは火をまったく入れていないので、アルコール度数が6パーセントほどあります! パンチが強いぶん、米粉のメレンゲの香ばしさと一緒にまぶした黒糖がいいアクセントになっていると思います」。
2つのメニューは、どのように着想されたのでしょうか。
「米粉を使ったデセールというお題をいただいて、まず3つの軸を決めました。小麦粉や穀物類の代用として使うならどんなデセールがつくれるか、米粉ならではのおいしさや食感が引き出せる調理法、そして相性がいい素材。そこからレシピを組み立てていきました」。
米粉を使用されてみて、いかがでしたか?
「蒸したときのいい香り、そして小麦粉以上にもちもち&サクサク食感に仕上がるところが米粉の持ち味だと感じました。いろいろな調理法を試してみましたが、デセールのレシピを考えるうえでも幅を広げてくれるいいパーツだと思います。あまり使ったことがなかったので、思いのほかとても使いやすい素材だと実感しましたね。日本生まれの食材という意味でも僕がつくるデセールのテーマにぴったりなので、今後は使う機会が増えそうです」。