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米粉に関する取材撮影を受ける長谷川有朋

生産者と同じ船に乗り、日本の米と食文化を広める

百笑市場(ひゃくしょういちば)は、生産者が創業した米の輸出・卸商社です。関東屈指の米どころ、茨城県の下妻市に拠点を置き、農業の恒久的な発展と国内外の食料需給の安定に寄与すべく、また日本の食文化を世界に広めるために、2016年に海外輸出を開始しました。

アメリカの日系スーパーで試食販売について語る長谷川有朋

アメリカの日系スーパーで試食販売

最初の一歩を踏んだのは、アメリカ西海岸のシリコンバレー。生産者を含む創業メンバー8人が、アップル本社があるクパチーノの日系スーパーでご飯を炊いて試食販売しました。同時に飲食店を回ってサンプリングをしながら、生産者のバックストーリーを説明し、おにぎりや炊き込みご飯などの調理方法も提案してきました。
初年度に60トンを輸出して以来、参画する生産者も増え、8年目となる2023年には、北米、アジアをはじめオセアニア、中東、ヨーロッパまで19カ国で、業務用を中心に昨年度の2倍にあたる約2500トンの成約をいただいています。

干ばつによる水不足で、日本産米へ期待感

世界には米の競合国がたくさんあります。アメリカ・カリフォルニアのカルローズ米という中粒種のほか、インドネシア、タイ、ベトナムなど東南アジアの長粒種、イタリアでもカルナローリなどのリゾット用円粒種や日本米と同じ短粒種が作られています。その中で日本産米を選ぶ動機は、もちろん品質が評価されたうえで、今は価格面のメリットが大きいと思います。一番は干ばつによる水不足の影響。さらにインフレや資材高騰などで、カリフォルニア米やイタリア産の短粒種が値上がりしているところに、円安で日本産米が安く手に入る状況で一人でも多くの方に食べてもらえれば、そのおいしさがわかると信じて生産者と共に販促活動を続けています。

おいしさの理由は、豊かな水とものづくりの精神にあり

日本産米は嗜好品としても可能性があります。国土が南北に長く、地形も起伏に富み、気候風土や寒暖差によって食味に違いが出ます。北海道産、新潟県魚沼産などのブランドを入り口に日本産米を知って、産地や品種に興味を持つ方も少なくありません。シェフや料理人からは、系統図や食味チャートを見たいというリクエストもあります。

日本流・米作りのこだわり

日本食ブームも追い風になり、日本で食べた料理を再現するには日本産米がいいという意識も浸透してきました。実際に食べ比べてみると、他国産米よりも圧倒的においしいと言っていただけます。その理由は、日本の気候風土が稲作に適しているからです。そもそも水が豊富にあるところでしか米を作ることができません。日本のお米は水分含有量が高いので、香りがよく、でんぷんのアミロース含量が低いので、もちもちした食感や甘味があります。
そのうえ、生産者が手をかけて米を作っています。稲を苗から育て田植えをするのは日本をはじめアジア圏だけで、他国やアジアでも大規模な圃場(ほじょう)では空から種を播きます。また、東南アジアでは二期作、三期作が当たり前ですが、日本で米を作るのは年1回のみ。日本にはものづくりに対するこだわりがあり、それが日本ブランドの価値を高めているように思います

日本流・米作りのこだわりについて語る長谷川有朋

海外で食されて再発見、日本産米の優位性

私たちのお客様の8割が飲食店や中食向けの炊飯事業者です。古米が多く出回る中、日本産米は水分をたっぷり含んだ新米で流通するので、その持ち味を生かした料理に適していると思います。

海外で食されて再発見、日本産米の優位性について語る長谷川有朋

テイクアウトで冷めてもおいしい

冷やしても食味が落ちないことも日本産米の優位性です。テイクアウトしたおにぎりや寿司をその日のうちに食べる習慣がない国も多く、冷蔵保存して常温に戻しても、あるいは冷たいままでもおいしく食べられるのは日本産米だからこそ。日本産米の新鮮度が高く、でんぷんのアミロース含量が低く、しかも日本の精米技術が優れていることも大きな理由です。

世界の食料問題の解決にも、日本の米・米粉の可能性

日本産米の付加価値を高める視点で、米から派生する米粉の加工食品に関心を持っています。日本の製粉技術や食品加工技術をもってすれば、小麦製品の多くは米粉に置き換えられると思います。

例えばラーメンを米粉めんでできたら

もし私が海外に売っていくならば、ラーメン用の米粉めんでしょうか。寿司と並んで人気の日本食ですから。米の輸出でそうしてきたように、日本の食文化を知って興味を持ってもらうことが米粉でも一つのきっかけになるでしょう。海外ではグルテンフリーやヴィーガンに一定の市場があり、そこでも米粉は訴求できる商品になると考えています。

世界の食料問題の解決にも、日本の米・米粉の可能性について語る長谷川有朋

日本は世界の冷蔵庫になれる

世界人口が増加する中、気候変動や紛争などで食料危機が叫ばれています。穀物である米は、主食になり、昆虫を食べなくても良質なたんぱく源になります。気候変動が進んでも、日本から水がなくなることは考えにくい。その中で品種改良や生産技術をさらに上げていけば、日本は世界の冷蔵庫になれると思っています。 新米を食べるのは日本特有の文化。品質を大事にするのは日本の精神。おいしい米を自国で生産して安い価格で食べられる環境にいることは、私たちは忘れがちですが、世界で見れば希少な存在です。国内自給が可能な米を食べることで、持続可能な日本の農業の一端を担ってほしい。それが、私たち生産者の思いです。

長谷川有朋のプロフィール

長谷川有朋氏

株式会社百笑市場 代表取締役社長
カリフォルニア州立大学フラトン校で金融工学・国際経済を学び、アメリカ・ロサンゼルスでアパレル卸・輸出会社に勤務。帰国後はプロバスケットボールチームの立ち上げ・運営、横浜DeNAベイスターズの通訳などを経て、株式会社百笑市場(茨城県下妻市)に輸出・国内販売などの事業統括として参画。2016年の輸出開始以来、生産者と共に海外渡航は50回以上を数える。2023年6月、同社取締役社長に就任。

▼百笑市場企業ホームページ
https://hyakusho-ichiba.co.jp/

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