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米粉アンバサダーとしての活動も数ヶ月目となりましたが、改めて感じた米粉の魅力についてお聞かせください。

「米粉は小麦粉の代用として使われることが多いものの、米粉には米粉ならではの個性があると改めて実感しました。当たり前のことですが、食感や香りも小麦粉とはまったく違うので、本当の意味で代替物にはならないんですよね。米粉がより身近な食材になれば、小麦粉好きと同じくらい“米粉好き”という方が増えていくのではないかと感じました」。

前回のインタビューでは米粉は独特なもちもち食感を表現できるとお話されていましたが、ほかに米粉の個性を挙げるとしたら?

「加熱をしたときの香りですね。原材料がお米なので、熱を加えると炊きたてのご飯のようないい香りがして。炊飯器を開けたときにふわっと香る優しい匂いのような」。

もともと「RESTAURANT HYÈNE」では、スペシャリテの「2年熟成メークインの米粉フォンダンショコラ仕立て」に米粉を使用されていますが、こちらのメニューでは米粉の個性がどのように生かされているのでしょうか。

「2年熟成メークインの米粉フォンダンショコラ仕立て」

「このメニューは、私のルーツがある韓国に昔から伝わる『ペクソルギ』というお餅がベースになっています。米粉と餅粉、ふかしたジャガイモでつくったペクソルギの中に、2年間熟成したジャガイモのピューレを包んで蒸しているんですが、一口食べたときに感じるもちもち感は米粉ならではだと思います」。

韓国では、米粉はとても身近な食材なんですよね。日本ではあまり見聞きしない、韓国らしい米粉の使いかたはありますか?

「韓国の家庭には置いてあることが多いです。メジャーな使いかたを挙げるとしたら、お粥とキムチ。韓国にはお米からつくるお粥のほかに、米粉に水分をくわえてペースト状にしたお粥もあって。米粉は水と合わせたときに粘り気や固形性が出るグルテンを含まないため、水分を加えるうちにどろっとした状態になるんです。お粥にすると、その米粉ならではの性質がよく感じられます」。

キムチにも使用されるんですか?

「はい! 発酵食品に粘度のある素材を混ぜると発酵が促進されるので、米粉や甘酒を一緒に入れることが多いんですよ」。

米粉アンバサダーとして米粉を使ったレシピも考案していただきましたが、米粉という食材に向き合うなかで発見はありましたか。

「製造しているメーカーによって、吸水率がまったく違うことには驚かされました! メーカーさんの作り方によって、お水を吸収する時間や含ませたあとの質感もがらっと変わるんですよ。米粉とひとくちにいっても、色々なメーカーや種類があり、汎用性の高い食材だと思います」。

最後に、米粉アンバサダーの活動を通して感じたことをお聞かせください。

「国内における米粉の消費率を調べるうちに、さまざまな課題があることも知りました。現状はおせんべいをはじめとする米菓としての消費率が高いことや、日本酒の精米過程で出る酒米粉の使い道であったりとか。米粉に限ったことではありませんが、食材としての魅力を生かすだけではなく、料理人としてどう食材に向き合っていくかを改めて考えるきっかけにもなりました」。

そのなかで、米粉に関する木本さんなりの答えは見えてきましたか?

「米粉についてまだ答えは出ていませんが、料理に使いながら模索していくことに意味があると考えています。米粉は味わいや消化のしやすさなども含めて、昔からお米を主食としてきた日本人とすごく相性がいい食材です。私たちの活動を通して米粉の存在がより身近になり、多くの人においしく食べていただけるようになれば嬉しいですね」。

木本陽子 氏

RESTAURANT HYÈNE(イェン)エグゼクティブシェフ 高校在学中のアルバイト先である、東京・三鷹のレストラン「エサンス」で料理の世界に魅せられ、辻調理専門学校を卒業後、「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」(東京)で研鑽を積み、韓国・ソウルの韓国宮廷料理レストラン「ハンミリ」へ。帰国後は、料理教室を立ち上げるなど、フリーの料理人として活動。2021年11月より現職「RESTAURANT HYÈNE」(イェン)のエグゼクティブシェフを務める。2022年に新時代の若き才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティションRED U-35 (RYORININ’s EMERGING DREAM)で「ゴールドエッグ」と岸朝子賞を受賞。

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