店舗フェアも今回で第3回目となります。お出しいただく2品のうち、まず「米粉と漬物のケークサレ」についてお聞かせください。もともとシグネチャーとして出されていた一品を、米粉を使ってアレンジされたとか。
「『Dessert&Wine 西洋茶屋 山本』ではデセールをお酒とのペアリングコースで楽しんでいただくのですが、こちらは最初にスパークリングワインと合わせる小菓子の1つ。普段は小麦粉を使っているので、自分のなかで試してみたい気持ちがあったんです。試作したところ思いのほか変化が出たので、店舗フェアのメニューに採用しました」。
具体的に、どんなお菓子なのでしょうか。
「米粉とパルメザンチーズを合わせた生地に、大きく角切りにした『京つけもの 西利』
の奈良漬を入れて焼きました。最後に海塩(フルール・ド・セル)を振って、チーズとはまた違った塩味をくわえ、塩気が単調にならないように調整しています」。
米粉でつくってみて、どんな変化がありましたか?
「小麦粉よりもしっとりサクッと焼き上がり、ほろほろ感も出ましたね。米粉の原料であるお米は日本人にとって親しみ深い食材というのもあり、奈良漬と合わせてみたら、どこか安心できるような味わいになりました。そういった点でもおもしろかったです」。
もう一品の「栗のウフアラネージュ 米粉のチュイル」についても教えてください。こちらはメインの前にお出しされるアシェットデセールですね。
「メレンゲを中心とした、ほんのり温かいデセールです。メレンゲにはフランス栗のペーストを使い、ほんのりラム酒を効かせています。ボイルしてから表面を炙って香ばしさを出しているので、一般的にイメージされるサクサクしたメレンゲとはまた違ったふわふわ食感。その横に、砕きながら一緒に召し上がっていただく米粉のチュイルを添えました。フランス菓子においては王道の組み合わせですね」。
普段チュイルをつくるときは小麦粉を使っていると思いますが、米粉にしたことによってどんな仕上がりになりましたか?
「米粉を使うことによって、日本人に馴染み深い味わいになりました。サクッとおせんべいのような香ばしさがあり、塩も効かせているので全体のアクセントになっていると思います。和洋のデセールをつくっている僕にとっては、新しい味わいのパーツを発見できたような気持ちがありました」。
下のアングレーズソースは、ほんのりと苦味がありますね。
「ウフアラネージュのようなメレンゲ菓子は甘くなりすぎることが多いので、ソースに黒ビールをつかって苦味を加えました。ほっこりした栗の甘味と調和するよう、最後に酸味のあるカシスのキャラメルもかけています」。
こちらのメニューを考案しながら感じた、米粉の魅力はどんなところですか?
「米粉ならではの香ばしさやサクサクした食感はもちろんですが、『一見洋風なのに、食べてみると味わいは和風』といった驚きを感じていただけるのも米粉のよさだと思いました。先ほどのチュイルもフランス菓子では定番のクッキーですが、食べるとおせんべいのような日本らしい香ばしさがあって。デセールのなかにそんなサプライズを込められるという意味でも、米粉は使っていておもしろいですね」
これまで米粉アンバサダーとして、さまざまなメニューを考案いただきました。これまでの活動を振り返ってみて、いかがでしたか?
「回数を重ねるごとに米粉じゃないとできない表現があることが実感できたので、今後も使い続けながら米粉ならではの部分を見つけていきたいですね。小麦粉の代用として使われることが多いと思いますが、米粉はグルテンが出ないというのもあり、食感や味わいもまったく違うんです。なので『どんな食感や味わいのデセールにしたいか』という視点で使い分けていけば、より表現の幅を広げていけるのではないかと感じています」。