第3回目となる店舗フェアでは、コースのなかで楽しめる米粉メニューを2品考案いただきました。まずはコースの中盤で出される「ジビエの米粉ドッグ」について教えてください。
「石川県で獲れたジビエでつくる、アメリカンドッグをイメージした一品です。いのししと鹿肉、ゴボウのコンフィを刻んだものを合わせたミンチ肉を、いのししのあばら骨に巻きつけています。ミンチにはガラムマサラやナツメグなど5種のスパイスを混ぜ込んでいるので、肉の旨味とスパイスのいい香りを感じていただけたら。その表面にジビエ肉でつくったソースを塗って冷やし、液体状の生地にくぐらせて揚げています。今回はその生地に米粉を使いました」。
生地はどのようにつくられているのでしょうか?
「クラフトビールに米粉と卵、スパイスなどを加えています。ビールを入れることで、ドッグの表面にビール酵母の香ばしさをまとわせるという狙いもありました。一般的なアメリカンドッグよりも薄い生地ですが、米粉を使用することによってほどよく食べ応えのある仕上がりになりましたね」。
上にかけたソースには、どんなこだわりが?
「『Auberge “eaufeu”』 (オーベルジュ オーフ)のある小松はトマトの産地としても有名なので、発酵させた小松産のトマトとパプリカを合わせたソースをつくりました。もう一つは自家製のマスタードです」。
もう一品の「さつまいもと米粉のドーナツ」は、コースの最後に出すお茶菓子なんですよね。
「さつまいもに米粉と片栗粉を加えて揚げました。米粉らしいもちもち感とともに、さつまいもの心地いい舌触りを感じられるよう仕立てています。上には近隣で採れたクロモジの葉を混ぜた砂糖をまぶしているので、さつまいもの甘味のあとにクロモジの爽やかな香りが鼻を抜けますよ。盛り付けは器にクロモジの葉を散らして、焼き芋をイメージしました」。
調理する際のこだわりも教えてください。
「低温の油に丸めた生地を入れて、それを小さな網でぎゅっと押したり離したりしながら、中に空気を含ませて揚げるんです。そうするとより軽やかに仕上がります。これは先日、台北のシェフから聞いた調理法で。興味深かったので、僕もトライしてみたんです」。
2品とも、地元産の食材がたくさん使われていますね。
「はい。農家さんから仕入れるだけでなく、僕らが近くの山から採ってきた食材も多く使っています。秋は近くの山に4時間こもって、きのこ狩りをしたこともありました(笑)。オーフがオープンしてから2度目の秋冬なんですが、去年は見ただけでは分からなかった品種が分かるようになったりして、感慨深かったです」。
これまでに糸井シェフが考案した米粉のメニューは、米粉による食べ応えや食感を生かしていましたが、メニューを考えながらどんな気付きがありましたか?
「先ほど紹介したドーナツもそうですが、ほかの粉の代わりに米粉を使うと食感や舌触りがこうも変わるんだ! といったおもしろさがありました。お客さまの声をお聞きするなかでも、やはり食感や歯応えが印象深いという反応もいただいて。米粉って、どんな食感を表現したいか考えたときに使い勝手がいいんですよね」。
今回の店舗フェアを持って、米粉アンバサダーとしての活動は終了となります。米粉の認知度をさらに高めるためには、どんな視点が必要だと思いますか。
「米粉は日本人の体に合っていると思うので、そういった点でもより認知度が上がれば、家庭やレストランでも当たり前に使われるようになるのではないでしょうか。これまでの活動が少しでも、そのきっかけになっていれば嬉しいです」。