日本一おいしい米粉麺へ異業種からの挑戦
私たちアルファ電子は、医療機器・精密機械のOEMが本業です。そんな当社が米粉麺の開発に着手し、自社製造するようになったきっかけは、2011年の東日本大震災にさかのぼります。私は生まれたばかりの娘を連れて、新潟県へ避難しました。
科学的根拠でおいしさを追求
3年間の避難生活でお世話になった先で米粉の紹介を受けました。その商品開発や製造を手がける会社との縁で、自社製品をつくろうと取り組んだのが米粉麺でした。家業を継ぐ決心をしてアルファ電子に入社し、景気に左右される受託製造業の弱さを痛感したのも理由です。
つくるからには日本一おいしい米粉麺をつくろうと目標を掲げました。その実現には「おいしい」の科学的根拠が必要です。『麺の科学』(講談社)の著者で工学院大学の山田昌治教授に米粉の評価試験を委託しました。その結果、米の粘度特性による粘りが出る時期と硬化する速度から、天のつぶやコシヒカリが製麺に適していることを確認しました。
無添加・グルテンフリー、福島県産
初めは新潟の米粉を使用していましたが、福島から逃げてはいけないという思いが強くなり、福島県産のお米を活用するようになり、福島県のオリジナル品種である天のつぶを使用した自社製品「う米めん(白米麺)」が誕生しました。
グルテンを含まない米粉だけで麺をつくるのは難しく、「う米めん」にもつなぎのデンプンが入っています。米粉100%の麺をつくろうと社内で開発している途上で、産学連携で米粉パスタの商品開発をしてほしいと、震災復興ブランド「古今東北」のバイヤーから声がかかり、宮城学院女子大学現代ビジネス学部とのプロジェクトが始まったのです。
宮城学院女子大学と米粉100%パスタを商品開発
女子大学生たちの提案は、小麦アレルギーを持つ方にも安心して食べられる、保存料や添加物を使わない、東北の素材を生かしたグルテンフリーの米粉麺です。
つなぎは秘密の国産米粉
女子大学生につなぎを使用した麺と米粉100%の麺を試食してもらうと、「米粉100%の麺のほうがもっちりとしておいしい」という感動の声が多く、その期待に応えようと開発を推し進めました。
デンプンを使うと生地が強固になりますが、使わないと生地が柔らかすぎて麺の製造が難しくなります。試行錯誤を繰り返し、最終的に福島県産天のつぶ米粉95%に別の米粉を5%を配合したことで生地がまとまり、もちもち食感のパスタができました。
米粉100%で生パスタのもちもち食感
理想のもちもち食感が出るまで、女子大学生と試食を重ね、米粉の配合や麺の太さを決め、量産体制へと運びました。商品のネーミングとパッケージは女子大学生が考案してくれました。こうして2023年8月24日、「古今東北 福島県産天のつぶ使用 もちっと米粉パスタ」(398円・税別/90g×2食)を発売することができました。
1年半をかけて開発した米粉100%のもちもち麺は、ゆで上げると生パスタさながらで、パスタソースはもちろん、シンプルに麺つゆでもおいしく楽しめます。
関心高まる米粉の麺、東北復興ブランドから
「古今東北」は、東日本大震災からの復興への思いを込めて、東北各地のえりすぐりの食品や加工品を集めたブランドです。
食糧自給率やグルテンフリーに注目
販売元の東北共同事業開発が、毎年、宮城学院女子大学の現代ビジネス学部の学生に授業の一環でつくりたい商品のアンケートを取ってきたなかで、2022年に「米粉パスタ」という意見が複数上がってきたそうです。学生のみなさんも、昨今の食料自給率の問題やアレルギーなどの社会的な通念から、米粉に注目したと聞いています。
また、米粉を使用した麺はもちもちしているとの認識があり、その特性を生かして東北の素材でおいしいパスタをつくりたいと考えたそうです。
パスタにも国産米粉のポテンシャル
今回、商品化した「もちっと米粉パスタ」は、米粉ならではの風味や食感がありながら、試食では「小麦の麺に近い印象がある」という評価をいただいています。グルテンフリーやアレルギーの方はもちろん、そうでなくても普段のパスタとそれほど変わらずおいしく食べていただけるのであれば、健康面でもプラスアルファ。生活者のみなさんに選んでもらえると期待しています。
安心・安全と品質は、メーカーの矜持
電子部品メーカーの米粉麺製造は、誰もが驚く異業種からの参入でしたが、ここへきてメーカーのものづくりの強みが生かされていると実感しています。
ニーズに応えて、学校給食にも米粉麺
もともとが医療機器や電子部品の受託製造で従業員に品質意識が浸透し、食品の安心・安全へも高い意識で取り組んでいます。また、原材料の粒米の調達から、製粉、製麺、包装まで一貫体制でできる数少ない米粉麺メーカーです。米粉麺でもOEM生産を受託し、米粉として製粉した状態でも、麺をさまざまなサイズにカットした状態でも出すことができます。
私たちの工場はグルテンフリー専用なので、製造工程で異物が混入することもありません。福島県をはじめ、北関東や東京の一部などで学校給食への供給も始め、短冊状にカットした米粉麺をスープパスタにして子どもたちに食べてもらっています。
福島県から米と米粉のものづくり
福島県には品質がよくておいしいお米がたくさんあります。米粉としての新規需要米の申請をサポートしながら生産者から直接仕入れてよい関係を築いています。そのお米を無添加で製麺できるのは私たちにしかない技術。ものづくり企業だからこそできる安心安全な商品を、これからも提供していきたいと思います。