経歴を拝見すると、22歳でニューヨークへ渡り10年弱、ミシュラン3つ星のフレンチ『Jean-Georges』で修業されたそうですね。
「そこで日本人初のスー・シェフを経て、日本に『Jean-Georges Tokyo』が初進出した際に料理長として帰国しました。その後はプロデュースしたグリルレストラン『The Burn』の料理長を務め、2022年に独立して西麻布に『No Code』をオープンしたんです」。
『No Code』は完全紹介制のレストランだとか。
「お世話になっているお客さまのために料理ができる、カウンターだけの小規模なお店をつくりたかったんです。なのでカウンター8席のみ、ほかの仕事とバランスが取れるよう営業も週2、3日にしました」。
コンサルやプロデュース業も積極的に取り組んでいらっしゃいますよね。
「お店に立ちながら料理以外の仕事をしたり海外へ行ったりと、理想的な働き方ができています。自分自身を飽きさせないためにも、いろんなことに挑戦していきたいですね」。
これまでにフレンチやグリルレストランを経験されていますが、『No Code』ではどんなお料理を提供されていますか。
「いろんな国のエッセンスを合わせています。『Jean-Georges』でお世話になったジャン・ジョルジュ・ヴォンゲリスティンシェフの料理がまさにそんなスタイルで、すごくいいなと思って」。
お料理をつくる際は、どんな視点から考えていますか。
「この食材をこう食べたらおいしくなるんじゃないかという視点。僕自身がどう食べたいかという気持ちをベースに、季節感や興味関心があるものを組み込んでいます。食材をシンプルに食べるのが好きなので、あまり複雑な料理は作りません」。
米粉フェアメニューの「穴子のフリット」も、そんなプロセスを経て考案された?
「はい。僕、単純に穴子のフリットが大好きなんですよ(笑)。フリットの香ばしさと素材の風味を生かした、まさに僕が食べたい一皿という発想からつくったメニューです。暑い季節なのでさっぱり食べていただけたらと思い、刻んだキュウリとミョウガ、ショウガ、レモングラスを合わせ、ライムジュースの酸味を効かせています」。
見た目も華やかで夏らしいお料理ですね。
「ありがとうございます。穴子のフリットと相性がよさそうな、夏らしい素材を感覚で合わせていきました。一緒に食べたときの食感も軽やかですし、噛むほどにそれぞれの風味を感じていただけますよ」。
フリットの衣に米粉を使っているんですよね。
「もともとお店でフリットをつくるときは、衣に米粉を使っていたんです。揚がったときのカリッとした食感と香ばしい風味がすごく好きで。米粉はグルテンフリーメニューに使う食材というイメージが強かったんですが、あるときフリットに使ってみたら、揚げものの衣はぜったいに米粉! と思うほどおいしかったんです。香ばしさが格段に違うし、揚げたての食感も最高で」。
ほかに今後、米粉を使ってみたい料理はありますか?
「パンなどの生地に使ってみるのもおもしろそう。何かしらの生地に採用してみたいですね。ほかにもいろんな使い方がありますが、これをつくるときは米粉! と決めている料理はいまのところ揚げものだけかな」。
米粉をテーマにお料理を考案されてみて、いかがでしたか?
「一つの食材をテーマに料理を考えたことは何度もありますが、やっぱり難しいですね(笑)。とはいえ、試行錯誤しながら食材のよさを見つけていく時間が楽しくもあります。お題があると、作り手の好みや考えがよく分かるのもおもしろいですよね」。
最後に、作り手としてこの米粉メニューに込めたメッセージをお聞かせください。
「何よりも、おいしく食べていただけたら嬉しいです。そして米粉の原料であるお米は日本を代表する国民食でもありますし、米粉のおいしさもより広く知っていただくきっかけになればと思います」。