高まる米粉パンのニーズ。トレンドを先読みして、新商品を続々発売しています(富永守さん)
タカキベーカリーは国内に8つの工場を持っており、色々な工場で米粉入りパンを製造しています。2023年には5種類のパンを発売しました。今回紹介するのは3種類。「石窯 国産小麦粉&米粉ロール」は4月に茨城県のつくば工場から。8月に発売した「国産玄米入りブレッド」は神奈川県の秦野工場で開発。9月より四国限定で発売している「米粉入りもっちりブレッド(黒糖)」は愛媛県の松山工場で生まれました。全国のトレンドを先読みし、また地方のニーズに合わせて、多様なパンをお届けしています。
お客様の声に応えて誕生した、米粉入りの石窯パン
当社が米粉入りパンの開発に着手したのは、いまから数十年以上前になります。スタート時は玄米粉などを中心に配合していました。米粉を使ったパン製造をさらに増やし始めたのは2020年頃からになります。米粉を使ったパンに興味がある方や、小麦の摂取量を減らしたいという健康志向の方たちから「米粉のパンをつくってほしい」というご要望の声を全国からいただくようになったのがきっかけです。(ただし、米粉100%のパンは未だ実現できていません)
その頃、全国の個人店などリテールベーカリーでも米粉を使ったパンを見かけるようになったので、日本全体で需要が高まっていたのだと思います。今も、米粉を使用したパンはお客様からの反響をいただいています。
想像以上に困難な道となった、米粉パンの開発
米粉は扱いの難しい材料。開発当初はとても苦労しました。 これまでのパン開発のノウハウを活かして、当初は「小麦粉を数十パーセント米粉に置き換えればいいだろう」と高をくくっていました(苦笑)。実際に開発を始めると、すぐに間違いだったと気づきました。
米粉を扱ったことがある方はご存知だと思いますが、米粉はグルテンがないため、膨らみにくいのです。また、米粉の種類、製粉の仕方で特徴が異なり、水分を吸収しすぎてべちゃっとした生地になる米粉もあります。
私は大学院時代、小麦の研究をしていましたが、米粉に関して知識がなかったので、まずは米粉に関する論文等から情報を仕入れて特性を理解することから始めました。その後は、つくりたいパンに向け、どんな特性の米粉が最適か、小麦粉と水との割合はどれくらいが適当か、安定して製造するには製造工程にはどんな工夫が必要か、ということをそれぞれ探っていったのです。
小麦粉のパンにはない、米粉ならではの良さ
試行錯誤の中で、米粉の特性が理解でき、その良さもわかりました。 米粉の特徴は、小麦とはデンプンの質が違いグルテンが含まれておらず、小麦粉だけでは出しにくい、もっちり・しっとりとした食感、お米の甘い風味があることです。焼くとおせんべいのような芳ばしい香りも楽しめます。そして小麦粉だけのパン以上に、和の食材との相性が良いのです。
その代表ともいえるのが「米粉入りもっちりブレッド(黒糖)」です。そのまま食べれば香り高い黒糖の甘みともっちり感を楽しんでいただけます。バターやはちみつはもちろん、和食材のあんことの相性も良いんです。食事にも、そしておやつとしても楽しんでもらえます。年齢問わず幅広く好まれるパンができたのでは、と思っています。
米粉の良さを活かした新商品を続々と
パンごとに米粉を厳選し、合わせる食材なども工夫する中で、米粉の特性やパンへの活用方法のノウハウも蓄積されてきました。その中で、「和食材との相性が良い」といった、米粉を使ったパンだからこその可能性も少しずつ見えてきたと感じています。小麦粉のパンの代わりとしてだけではなく、米粉入りパンだからこその展開も考えながら、今後もラインナップを増やしていきたいですね。ご期待ください。
米粉の活用により、未来に向けた食卓提案に挑戦したい(多久美香理さん)
研究開発部が苦労してつくってくれた米粉入りパンは、どれもこれまでなかった新しいパンの楽しみ方ができる、他にはない商品になったという自信を持っています。
「美味しくて健康にも良い」と好調な米粉入りパン
「米粉入りもっちりブレッド(黒糖)」はその柔らかさともっちり感から、幅広い年齢の方に選んでいただけるのではと考えています。
「国産玄米入りブレッド」は、煎った玄米の芳ばしい香りやお米特有の食感が楽しめます。もちもちとした食感に黒糖蜜やきび砂糖のほどよい甘みが特長。しっとり耳までやわらかく、サイズも小ぶりなのでそのまま手軽に食べてもらえます。玄米は、ミネラルやビタミン、食物繊維が豊富といわれています。健康に気を遣っている方からも喜んでいただいています。
「石窯 国産小麦粉&米粉ロール」は人気のハード系のカイザーパン。そのまま食べると米粉のもっちりしっとりとした食感を感じられ、焼いて食べると上面の切れ目が香ばしく焼けておせんべいのような芳ばしい香りがたまりません。「米粉を使うことで、タカキベーカリーのパンが新たな境地にたどりつくことができた」と感じた、自慢の商品です。
どの商品も米粉は「国産」にこだわっており、おかげさまでお客様から高く評価いただいただいています。
パンの抱える課題解決のヒントが米粉パンに
コンスタントに新しい米粉入りパンを開発・発売する中で、今後のパンの未来を大きく拓く可能性も秘めていると感じています。
パンの良さは、手軽に食べていただけること。お米のように洗って炊飯する、という手間はいりません。一方で、パンは朝食・昼食に食べるというイメージがあります。そのため「子どもにはご飯を食べさせたい」「夜はご飯を食べたい」といった方に選ばれにくいと言うのが現状です。
米粉入りパンは、その突破口になるのでは、と考えています。
パンの良さとお米の良さ、どちらも併せ持つ米粉入りパン
米粉入りパンは和の食材ととても相性が良いのが特長です。パンと言えばバター、ハチミツ、ジャムを塗る、目玉焼きやハム・ベーコンを乗せる、あるいは洋食であるハンバーグやシチューと合わせたりサラダやカツをはさんでサンドイッチにするといった食べ方をイメージされる方が多いと思います。それに加え、米粉入りパンなら、お米と共に食べる食事、たとえばカレーとの相性も良いのです。小麦粉のパンでつくるのとはまた違った、カレーライスに近いカレーパンもできるのでは、と考えています。
さらに和食材である抹茶やきな粉、あんこもとても合います。そして和食の照り焼きやきんぴらなどとの相性も抜群です。意外かも知れませんが、お味噌汁と一緒に食べるのもオススメ。アレンジ次第でお酒の肴としても活躍します。
米粉入りパンの特長である、お米の甘い香り、焼いたときのおせんべいやお餅のような香ばしさが、和の食材にぴったりです。お米で育ち、お米に親しんできた日本人にはとてもなじみやすい特長となっています。一度味わっていただければ、その魅力や良さを感じていただけると確信しています。
食卓の新しい選択肢に
米粉入りパンのこの特長と、これまでのパンでは想像つかなかったような食べ方を提案することで、朝食・昼食はもちろん、おやつや特別ではない普段の夕食のお供としてもパンを選んでもらえるようになるのでは、と考えています。
例えば、以前発売した米粉のマフィンは、ささっと具材をはさんで朝のおにぎりの代わりにというように、お米のご飯が担っていた役割を、米粉入りパンならより時短で簡単においしくお手伝いできるかもしれない、と思い企画しました。
そのように食の選択肢を広げることで、新たなおいしさや楽しさの発見につながる。そしてパンが日々の食卓をより豊かにすることができる、と考えています。
今後も米粉を使ったさまざまなパンをご提案していきます。ぜひ手に取って、その手軽さとおいしさを毎日の暮らしに採り入れていただければと思います。
株式会社タカキベーカリー
「アンデルセン」や「リトルマーメイド」、「タカキベーカリー」などのベーカリーブランドを日本のみならず海外にも展開している 「アンデルセングループ」。 その中で、広島県広島市に本社を置く株式会社タカキベーカリーは、全国8箇所にある工場でパンや洋菓子を製造。スーパ一マーケットの店頭で「タカキベーカリー」のパンを展開するホールセール事業、インストアベーカリー、ホテル、カフェ、レストランに卸すフードビジネス事業、「リトルマーメイド」をフランチャイズ展開するFC事業を展開している。ヨーロッパの伝統的な職人の技をお手本として丁寧に焼き上げたパンや洋菓子など、バラエティ豊かで多彩な商品を次々と開発し全国の食卓に届けている。
広島県広島市安芸区中野東3-7-1
https://www.takaki-bakery.co.jp/