ひらまつ運営のカフェ・ミケランジェロで生地がおいしい新料理
代官山で長く親しまれているカフェ・ミケランジェロは、伝統的なイタリア料理を気軽に楽しんでいただくことをコンセプトに、2023年9月のリニューアルオープンに臨みました。
軽さがおいしい、ピンサ・ロマーナ
リニューアルでは、夜も気軽に立ち寄れるカフェとして、ワインなどのドリンクと共に楽しめるメニューを充実させました。そのひとつが、「ピンサ・ロマーナ」です。小麦粉、米粉、大豆粉を使用して長時間発酵させた生地は、気泡と水分を十分に含み、外はカリッと中はもちっとした軽やかな食感が特徴です。
新メニューとして、ピッツァのようなもので、より軽く食べられる料理を探していたところに、ひらまつと長い付き合いのあるイタリア人シェフから「ピンサ」の紹介がありました。軽くおつまみ感覚でワインと共に楽しんでいただいても、パスタや前菜、メイン料理と組み合わせていただいてもちょうどよく、リニューアルのコンセプトにぴったりです。
ピッツァ生地ともまた違って、軽やかでヘルシーさもあり、軽くつまみながら食べられるカフェ向きのメニューだと思います。ピンサという料理名にもそんなイメージを持ちました。
小麦粉・米粉・大豆粉の絶妙なミックス
ピンサは日本ではまだ馴染みがありませんが、イタリアでは広がりを見せはじめています。
小麦粉、米粉、大豆粉等をミックスしたピンサ粉が流通していて、それらの配合はメーカー各社独自の企業秘密です。当店では生地そのものの食感と風味が生きるよう、オーブンで香ばしく焼いて、シンプルなトッピングで提供しています。
(料理長・山本陽平さん)
古代ローマに起源を持ち、時を超えてブラッシュアップ
ピンサとピッツァの一番の違いは、軽やかな食感です。初めてピンサを召し上がる方も多いと思いますので、食感が楽しめるようにシンプルに提供しています。
生地のおいしさをシンプルに味わう
カフェ・ミケランジェロでは、トマトとバジルソースの「ロッサ」、ローズマリーソルトとバジルソースの「ビアンカ」の2種類を用意しています。ほどよい大きさで軽く食べられ、焼き上がりの香ばしさに米粉が感じられるかもしれません。
ローマで復興、ヘルシーさでも人気
私が聞いたところによると、ピンサは古代ローマ時代に食べられていたものが、この10年ぐらいでローマを中心にリバイバルして、イタリアで新ジャンルとして広がってきているそうです。
その背景として、ピンサのヘルシーさが着目されているようです。小麦粉だけでなく、米粉と大豆粉を使ったピンサ生地は、ピッツァや白パンと比べて低カロリー・低脂質・低炭水化物で、グルテンもわずかなため消化にもいいと言われています。
当店はアルコール類も充実しているので、ワインやビールのお供に、ピンサは軽さがちょうどいいと、お客様からも好評をいただいています。(支配人・阿部優さん談)
ピンサ生地のポテンシャルに、米粉の特性が生きている
新メニューとしてピンサをシンプルに提供してきましたが、リニューアルオープンから1年が経ったところで、そろそろバリエーションをつけてみてもいいかもしれません。
食材を受け止めるピンサ生地
ピンサ生地はシンプルなので、さまざまな食材と相性がいいと思います。生ハムとルッコラをトッピングして食事の一皿としてはもちろん、フルーツをのせたピンサもおいしいと思います。バリエーションのひとつとして、チーズをのせて焼くこともできます。
生地の保存がしやすいこともピンサの利点です。冷凍しても風味が損なわれないので、飲食店でストックしておき、焼いて、仕上げにトッピングをして提供できるので、カフェのメニューにぴったりです。軽くて胃にもたれないのは、小麦粉、米粉、大豆粉のバランスが良いからだろうと思います。
成形する前のピンサ生地は、搗きたてのお餅のようにやわらかく、それを焼き上げると外はカリッと香ばしく中はふわっと仕上がります。水分や気泡を保持する力など、米粉の性質が多分に生かされているのではないでしょうか。
(料理長・山本陽平さん談)
米食でつながる日本とイタリア、ピンサに学ぶ米粉の使い方
イタリアにはお米を使った料理がたくさんあります。リゾットやサラダ、お米のプリンも定番です。その一方で、イタリアで米粉を使ったレシピを聞いたのはピンサ生地が初めてです。
料理を良くする米粉の性質探る
米粉が食材として浸透していくには、小麦粉の代わりとして使うのではなく、このピンサの食感のように、料理自体を良くする目的での使い方ができればいいと思います。おいしくなければ広まらないと思うので、米粉の特性を生かしていく使い方ができれば良いのだと、ピンサという料理に出会ってあらためて思うところです。米粉の使い方が広がり、国産米粉にも興味が湧いてきました。
(料理長・山本陽平さん談)
伝統食材で新たな料理にアップデート
日本人でも、米粉は知っていても、その使い方までは意外と知らないものです。イタリア人からピンサ生地への米粉の使われ方を聞いたのは面白いですね。
日本やイタリアに限らず、食材や料理、文化が絶えずイノベーションされる中で、昔からあるものを取り入れて、新しいものをつくることは多くの人がやってきたことです。米粉にしても、さまざまなジャンルの料理人のチャレンジが、これからもあるのではないでしょうか。
食のヘルシー志向というベクトルで十分に米粉の可能性はあるでしょうし、米を作って田んぼを守っていくためにも、国産米粉のいろいろな消費の仕方を料理人を含めて考えていくと良いのでしょうね。(支配人・阿部優さん談)