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観客も息が止まる、世界最高峰のプール競技が日本初開催

プールフリーダイビング世界選手権「34th AIDA World Championship 2025 Wakayama」が、2025年6月25日(水)から7月3日(木)まで、和歌山県の秋葉山公園県民水泳場で開催されます。

競技種目は、一呼吸で泳ぐ距離を競う「ダイナミック・ウィズ・フィン(DYN/1枚フィン)」、「ダイナミック・ウィズ・バイフィン(DYNB/2枚フィン)」、「ダイナミック・ウィズアウト・フィン(DNF/フィンなし)」に加え、水面で息を止める時間を競う「スタティック・アプネア」の4種目です。

日本代表夫妻が競技と運営で牽引

この大会を盛り上げるのは、日本代表として出場し、同時に運営にも携わる大井慎也さん・沙矢加さん夫妻。慎也さんはスタティックを除く3種目で日本記録を持ち、今大会では全4種目に出場。日本フリーダイビング協会の会長も務めています。沙矢加さんは、ノーフィン以外の3種目に挑みます。

慎也さんがこの競技を始めたのは、経営するスキューバダイビング店でフリーダイビングの普及を頼まれたことがきっかけ。「人に教えるには自分が経験しないと」と競技の世界へと飛び込みました。「応援してくれる人たちへの恩返しがモチベーション」と語ります。

日本代表夫妻が競技と運営で牽引

一方の沙矢加さんは、家族旅行先で体験した素潜りの楽しさから、自然と競技へと足を踏み出しました。「自分と向き合うスポーツだからこそ、記録を伸ばすことで成長を噛みしめられる」と、フリーダイビングの魅力を語ってくれました。

人間の限界に挑む雄姿

「プール競技では、8分以上息を止める選手や、一呼吸で300mも泳ぐ選手もいます。人間の限界に挑む選手の姿を観客も思わず息を飲んで見守ります」と慎也さん。フリーダイビングの競技会場は水を打ったような静寂に包まれ、緊張感に満ちています。

選手は息を止める訓練もしますが、そのパフォーマンスを発揮するには基礎体力や心肺機能、体幹の強化が欠かせません。だからこそ、日々のトレーニングと食事による体づくりが重要なのです。

競技を支える食事、カギは抗酸化食材と米飯

大井慎也さん・沙矢加さん夫妻が、日々の食事で特に意識しているのが「抗酸化力の高い食材」を積極的に摂ることです。

血液にも目を向ける、独自の食事管理

血液にも目を向ける、独自の食事管理

慎也さんは「もずくやトマト、セロリなどをほぼ毎食摂っています。息を止めると血液が酸性に傾くので、なるべくアルカリ性に振っておきたい」と話します。競技の特性上、血液の状態にも気を配る独自のコンディショニング法です。

沙矢加さんは「競技を始めたばかりのころ、技術ではベテラン選手に追いつけなくても、食事はすぐに変えられると気づいて、1日3食、生野菜を意識して取り入れました」と振り返ります。

ご飯がなければ始まらない、勝負メシの原点

一方、競技やトレーニングのエネルギー源として欠かせないのが米飯です。「今日はハードな練習だったので昼はおにぎり、朝もご飯をしっかり食べました」と慎也さん。国内外の遠征には必ずフリーズドライの米飯を持参し、味噌汁と一緒に食べるのがルーティン。知らない食材で体調を崩すリスクを避け、信頼できる日本の米でコンディションを整えるのだそうです。

「大会本番前のお米は欠かせません。体への負担がなく、安定したエネルギーが得られます」と沙矢加さんも同意見です。

ご飯がなければ始まらない、勝負メシの原点

慎也さんの勝負メシは「ネバネバ丼」。ご飯にオクラ、もずく、山芋などをのせて食べます。「トレーニング後には豚キムチを追加して、たんぱく質も意識して摂ります。」と沙矢加さん。体づくりは日々の積み重ねだからこそ、毎食、何を食べるかは重要だと考えています。

ご飯がなければ始まらない、勝負メシの原点

「日本のお米は甘みがあって本当においしいので、海外の選手にも驚かれると思います」と語る大井夫妻。6月28日と29日は、公式スポンサーの東洋ライス株式会社と株式会社アシストが協力して、選手・スタッフ向けにキッチンカーを出店し、おにぎりや米粉うどんを提供します。グルテンフリーやヴィーガンに対応した食事も日本の強みです。

事前に同社を表敬訪問した夫妻は、社員食堂で提供されたロウカット玄米に感動。「ふっくらやわらかで従来の玄米とはまったく違いました」と沙矢加さん。「子どもたちもおかわりするほどの味」と慎也さんも太鼓判を押します。

日本開催の今大会は、競技だけでなく、お米の魅力を体感できる絶好の機会となりそうです。

「日本で、やってみよう」。その一言が、世界を動かした

プールフリーダイビング世界選手権が、日本で初めて開催されることになったのは、慎也さんによる立候補がきっかけでした。ヨーロッパとアジアの交互開催を希望するAIDA Internationalの意向を汲んで予定より1年前倒しの開催が決定しました。

和歌山県に世界のトップ選手が集結

舞台は、国体の会場になった和歌山県の秋葉山公園県民水泳場。県スポーツ課や和歌山県水泳連盟の協力により実現しました。天井に紀州材が使われ木の香りがほのかに漂う舞台に、選手と観客を迎えます。近くには和歌山城がそびえ、名産品の紀州梅や和歌山ラーメンなど食の体験も選手を歓迎します。

今大会は過去最大規模で、世界49カ国から選手約250名、関係者を合わせると350~400名が来日予定。例年の倍近い人数にのぼり、開催地への関心と期待の大きさを物語ります。

和歌山県に世界のトップ選手が集結
日本の米で心身を整え、記録更新と大会の成功へ

日本の米で心身を整え、記録更新と大会の成功へ

母国での大舞台に挑む、大井慎也さん・沙矢加さん夫妻。それぞれが胸に抱く思いを語ってくれました。

「僕の描く最高のストーリーは、最終日のダイナミック・ウィズ・フィン最終組で世界記録を出して大会を締めくくること。そのための準備は整っています」と慎也さん。運営の中心を担う立場からは、「記録を出すより、大会を無事に終えるほうが大変かも」と冗談めかして語ります。

沙矢加さんは、「日本開催は、食事や環境の面で本当にありがたいです。普段どおりにお米を食べて、いつも通りの自分で挑めることが心強いです」と話します。

「フリーダイビングは一見静かな競技。でも、初めて観戦する方にも選手の緊張や苦しさ、張り詰めた空気が伝わると思います」。

この機会に、ぜひ会場へ足を運んで、世界一の記録をかけた選手たちの挑戦を肌で感じてください。YouTubeのライブ配信でもその緊張感を味わうことができます。選手たちの静かな闘いを、息を飲んで応援しましょう。

【大会概要】

34th AIDA World Championship Wakayama 2025

AIDA(国際フリーダイビング協会)主催のフリーダイビング・プール競技の世界選手権。2025年6月25日~7月3日、和歌山県の秋葉山公園県民水泳場(あきばさんプール、和歌山市秋葉町4-11)で開催。6月26日の公式トレーニングと開会式で幕を開け、7月2日の最終種目の競技と表彰式・閉会式で幕を閉じます。日本代表の20名をはじめ、世界中から約250名の選手が出場予定。競技の模様はYouTubeにてライブ配信されます。

▼大会公式サイト https://www.aidainternational.org/EventPage/4349
▼YouTubeライブ配信 https://www.youtube.com/@AIDAFreediving/streams
▼日本フリーダイビング協会(Japan Apnea Society) https://aida-japan.com/

大井慎也(おおい・しんや)のプロフィール

大井慎也(おおい・しんや)

1978年、三重県鈴鹿市生まれ。2013年よりフリーダイビング競技に出場し、以降、国内外の大会で多数の優勝・入賞を重ねる。2015年から日本代表として世界選手権に出場。プール競技3種目(DYN/DYNB/DNF)で日本記録を保持。              
フリーダイビングショップ『シレーナ』を主宰し、講習・トレーニング・大会運営を通じて競技普及に貢献している。
▼フリーダイバー大井慎也公式サイト
https://www.shinya-oi.com/

大井沙矢加(おおい・さやか)のプロフィール

大井沙矢加(おおい・さやか)

千葉県出身。ハワイでのドルフィンスイム体験をきっかけにスキンダイビングを始め、素潜りの魅力に惹かれフリーダイビングの世界へ。2016年に競技デビューし、初出場のスタティック種目で6分超の記録を達成。2018年には日本代表として世界選手権に出場。
現在は三重県在住。ストレッチトレーナーの資格を生かし、身体の柔軟性や肺活量アップの指導を行い、チームシレーナの競技力向上に尽力している。

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