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米粉に関する取材撮影の中沢美佐子

世界の食卓から知る、米・米粉の普遍性

日本人の主食であるお米は、海外でも多くの料理に使われています。スペインのパエリア、イタリアのリゾット、イギリスではミルク粥のようなライスプディングに。西アフリカのギニア湾岸諸国にはジョロフという唐辛子を効かせた肉とトマトの炊き込みご飯、メキシコなどの中南米では鶏肉や野菜の雑炊ソパ・デ・アロスなど、米料理は世界各国に根付いています。

米・米粉の普遍性について語る中沢美佐子

カタチを変えて親しまれる米・米粉

主食や主菜・副菜だけではありません。「中国では米で造る酒醸(チューニャン)という甘酒を調味料やスイーツにしたり、ブラジルではご飯の揚げ団子を子どもたちがおやつに食べています」と中沢さんは、国を超えたお米の普遍性に着目します。

「インド圏のスパイシーな炊き込みご飯、ビリヤニが話題になるなど、アジア飯の流行りにはお米ベースのものが多数あります。ベトナム麺のフォーや生春巻きに使うライスペーパーは、米粉が原材料です。カタチを変えてさまざまな料理になる。それが米・米粉という食材です」という中沢さんの言葉から、その可能性が見えてきました。

グルテンフリーやアレルギー対応で注目

料理界に幅広い人脈を持つ中沢さんは、こう語ります。
「シェフや料理人は、アレルギー対応やグルテンフリー食材として米粉に関心を持っています。特にインバウンドの拡大により、小麦の代替として米・米粉が用いられるようになりました。といっても、小麦アレルギーの少ない日本でグルテンフリーは未だニッチな世界。食材としての国産米粉は、むしろ海外で先に認知され、日本に広がるかもしれません」。

欧米で認められる日本産米粉のクオリティ

世界のグルテンフリー市場規模は、アメリカや欧米を中心に加速的に拡大し、2024年には約100億ドルに達する見込みともいわれています。 日本の食と食文化を世界に発信する組織として、日本貿易振興機構ジェトロが立ち上げた「JFOOD(ジェイフード)が、2022年にアメリカで実施した日本産米粉のプロモーションでは、クオリティ、食感のよさ、他の粉と混ぜて使えることなどに関心が寄せられています。

「海外の長粒米と比べてジャポニカ米は圧倒的に品種が多く、日本のモノづくりは米粉の製粉技術でも優れています。高品質で用途によって使い分けができる日本の米粉は、海外のシェフにも魅力だと思います」と、中沢さんは海外での評価に期待を寄せます。

欧米で認められる日本産米粉のクオリティについて語る中沢美佐子

食材として面白い米粉、小麦粉との違いを知る

料理人やシェフたちに倣って、私たちも国産米粉を使いこなすには、その性質を知る必要があります。そのポイントとして、中沢さんはアミロース含有率と火の入れ方を挙げます。
「米粉のパンやドーナツの食感はモッチリをイメージする人も多いでしょう。しかし、それは粘りのある低アミロース米の性質。粘りの少ない高アミロース米はサクサクになります。さらに、火の入れ方でも食感が異なり、軽く焼けばしっとり、茶色く焼き色を付けると外はサクサクで中はモッチリ、さらにこんがりと焼き上げるとザクザクとした食感になります」。

小麦粉との違いについて語る中沢美佐子

小麦の代替では終われない国産米粉

肝心なのは、小麦粉との性質の違いです。「小麦粉は水に浸すと吸水しますが、米粉は熱を加えることで吸水が活性化します」と中沢さん。意図した仕上がりにならないとしたら、そこに原因があるかもしれません。

「米粉が食材として根付くためには、小麦の代替としてではなく、米粉だからこそ出せる味わいを追求することが必要なのかもしれません」と中沢さん。その事例となるのが、ブーランジェリーComme’n(コム・ン)のグルテンフリー専門店Comme’n GLUTEN FREE(東京・世田谷区奥沢)。
「日本人で初めてパンの世界大会モンディアル・デュ・パンで総合優勝を果たした大澤秀一さんと、小麦アレルギーの経験を持つスタッフが中心となって、小麦アレルギーを持つ人にも、わくわくしてパンを選んで、おいしく食べてほしいという想いで作られているのだと思います」と教えてくれました。

マーケティング視点からの米粉の可能性

「日本の食文化や食生活が紐づくと、国を超えて食べる人に響くのではないでしょうか」と、中沢さんは、日本産の米・米粉の発展性を見出します。

和魂洋才、ニッポンの食文化から米・米粉に親しむ

2023年3月、三重県・多気町の商業リゾート施設「和ヴィソン」で、世界最高峰の料理大学といわれるCIA(カリナリー・インスティチュート・オブ・アメリカ)の学生が、日本の発酵文化を体験しました。
「お米と漬物などの発酵食品で腸内環境が整う日本の食文化は、世界的にも素晴らしいと思います。海外の料理人だけでなく、日本人にもそのよさを再発見してほしいですね」と中沢さん。和ヴィソンには、昆布、味噌、醤油、漬物、酒、米などのメーカーが集まり、一般向けに蔵や製造工程の見学、ワークショップやイベントなどで食文化体験の機会を提供しています。

米粉の可能性について語る中沢美佐子

古くて新しい日本の米粉に期待

「料理人には食材に対するこだわりと探求心があります。寿司屋が古米を好むのは、吸収率がよく酢が馴染むから。お米の使い方に根拠があるように、米粉もまた選び方・使い方で料理の仕上がりが変わります」。
米はもちろん、米粉も和菓子などで昔から日本人が親しみ、調理や製造の技術を積み重ねてきた食材です。パンや菓子、麺などの新用途でも、日本ブランドへの愛着と食材へのこだわりが、米粉の可能性を切り拓くカギになりそうです。

中沢美佐子のプロフィール

中沢美佐子氏

「料理王国」元発行人 株式会社JFLAホールディングス 相談役
月刊誌「料理王国」の発行人として、マーケティングを生かした様々なイベントや商品開発等、俯瞰的な「食」のプロデュースを行う。2019年7月に代表取締役と発行人を退任し、現在はフリーな立場で「食」に関するアドバイスや商品開発などを行っている。また、「食」以外の分野の新しい市場創造も構築中。

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