前回に続き、2品の店舗フェアメニューを考えていただきました。今回は2つの温菜ですが、はじめに「ハーブが香る米粉水餃子」について伺えますでしょうか。
「水分をよく吸う米粉の特性を生かした水餃子です。米粉100%でつくった餃子の皮に、スープを吸わせながら食べていただきます。皮は小麦粉を使うときよりも表面がつるっと仕上がって、もちっと滑らか。この真っ白な色合いも米粉ならではだと思います」。
水餃子とスープ、それぞれについて詳しく教えてください。
「餃子の餡は豚肉にきくらげ、春雨、刻んだパクチーなどを練り込んで、食感豊かに仕上げました。スープを吸った皮をしっかり楽しんでいただきたかったので、餡は小さめ。米粉の皮で包んでから、スープに使っている昆布出汁で火入れしています。スープにはコリアンダーシードとグローブを効かせているんですが、スパイスを入れすぎると苦味が出るので、スープを仕上げる直前にスパイスをくぐらせるようにして香りを移しています」。
もう一品、「バインセオ 米粉とターメリックのケークサレ」もつくっていただきました。
「ベトナムの定番料理である『バインセオ』をアレンジした一品です。バインセオは生地で具材をはさんだボリューミーな料理なので、コース料理のなかにどう組み込むか考えたときに、小さくケークサレのようにアレンジすることを思いつきました。生地に米粉を使って外はカリカリ、中はもちもちに仕上げています」。
先ほど試食しましたが、口いっぱいにココナッツのいい香りが広がってきました。
「ココナッツミルクで米粉を伸ばして、揚げ焼きにしているんです。本来のバインセオもこうしたレシピでつくるものなんですが、今回はココナッツの香りを強く出したかったので、生地を焼くときの油にココナッツオイルを使いました。そこに瀬戸内で摂れる小エビを合わせて、エビの旨味と香ばしさを加えています」
タレについても教えてください。
「ヌクチャムという魚醤を、柑橘果汁で割った付けダレです。本場ベトナムではシークワーサーに似た柑橘を使うことが多いんですが、私はレモンやすだち、柚子など、日本で摂れる季節の柑橘を使用しています。付けダレの酸味とバインセオの食感、ココナッツの香りとの組み合わせを楽しんでいただけたら」。
これまで数ヶ月にわたり米粉アンバサダーとして活動いただきましたが、振り返ってみていかがですか?
「制限がある方が普段とはまた違う発想が生まれるので、米粉という限定されたメニューを考えるのは楽しかったです。米粉のもととなるお米は日本人にとって親しみのある食材ですし、品質が高くそのまま炊くのがひとつの完成形です。なのでそれを加工した米粉をいかにおいしく、魅力的に感じていただくかという点には難しさを感じました」。
米粉という素材がより身近なものになるためには、どんなアプローチをしていけばよいと考えますか。
「米粉を使ったり、食べる人を増やすためには、小学校の給食に取り入れるなどして、『小さいころから親しんできた食材』という位置付けになっていくのがベストかなと思います。お米もそうですが、子供のころから毎日のように食べているものって生活の一部になりますから」。
味覚にも影響しますよね。
「給食は炭水化物である主食が占める比率が決まっていて参入は難しいかもしれませんが、まずは何かの代用として取り入れていけたらいいのかなと。米粉はグルテンフリーなので食べられる人の数も多いですし、より広く親しんでいただけるようになったら嬉しいですね。米粉アンバサダーとしての活動は終了しますが、これからも何かしらの形で関わってみたい食材です」。