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米粉がブーム、使ってみればもっとハマるかも

米粉レシピを研究して10年ほどになりますが、この数年で米粉を取り巻く環境は大きく変わってきました。どこへ行っても外食メニューに米粉料理が1つはあり、米粉専門のパン屋さんができていたり、Instagramにも米粉レシピがたくさん投稿されています。

パンをおいしく作りたいから始まったレシピ研究

今、小麦の代替としてではなく、美容や健康、生活を心地よく整えたいなどのポジティブな理由で、米粉を取り入れたい人が増えていると思うと嬉しくなります。私が米粉レシピを研究するようになったのは、子どものアレルギーがきっかけでした。10年前のことです。

米粉を売っているところは少なく、情報やレシピもあまりない中で、米粉パン教室に行ってみましたが、あまりおいしくできなくて、料理家として何とかしたいと思い、米粉レシピの研究を始めました。

米粉の種類で仕上がりが違うおもしろさ

米粉論文や文献を読み漁り、手に入る米粉はすべて取り寄せ、同じ条件でパンやクッキーを焼いたり、めんを作る実験をして、米粉は種類による性質の違いが見えてきました。道の駅でも農家さんが自家製粉した米粉を買ってみると、同じ菓子用の米粉でも販売メーカーさんによって全く違う仕上がりになるんです。それがおもしろくて、すっかり米粉にハマってしまいました。

子どもは4歳のときに小麦が大丈夫になりましたが、食材としての米粉がおもしろくて、もっと広まってほしいという思いでレシピの開発を続けています。

小麦とは別のもの、米粉のおいしさをいちばんに

私が世の中に出す米粉レシピの基準は、子どもが食べておいしいかどうか。大人なら体にいいからと意識して食べるかもしれませんが、子どもの評価はおいしさに率直です。私は、子どもやお友だちの反応を見て「これはいける」と判断しています。

子どもの「おいしい!」でレシピを評価

子どもは10歳になり、プレーンの蒸しパンもおいしそうに食べるので、大人が思うよりも素材の味がわかるのではないかと思います。お友だちが遊びに来たときなどは、パンやお菓子、ピザなどを作ってさりげなく出してみると、みんな「おいしい!」と言って食べてくれるので心の中で「しめしめ」とガッツポーズです。普段からお米を食べているから、違和感がないのかもしれません。

世の中にこれだけおいしい米粉レシピが出ているのだから、わざわざ小麦粉のパンやめんに似せなくても、別物として楽しんでもらうほうが、そのよさが広まるのではないかと考えています。

上手に作るポイントは米粉の選び方

そもそも小麦粉と米粉は、タンパク質などの成分が違います。10年以上前にも米粉ブームがありましたが、種類や製粉によって性質が違うことまでは、あまり知られていませんでした。小麦粉と同じようにパンを作ってもうまくいかず、みんな米粉を使いこなせなくて離れていってしまったのだと思います。

今、まさに第2次米粉ブームが来ています。米粉の品種も増え、製粉技術も上がって、より使いやすい食材になっているので、選び方さえわかれば、パンやお菓子はもちろん、いろいろな料理を作ってもらえると思います。米粉を使う人が増えれば、スーパーなどで多くの種類の米粉が手に入りやすくなると期待を込めて、日々レシピを研究しています。

失敗しないために大事なのは、米粉の選び方。同じ量の水と米粉を使っても種類によって膨らみ方が違うことも、私のレシピでは必ず説明するようにしています。

実は万能な米粉、1日の食事とおやつは全部米粉で

米粉が使いやすくなって、自分で何か作ってみたいという人が増えています。こうしたニーズに応えて、私のレシピも進化しています。

手に入る材料、家にある調理器具で

以前は、どちらかというと食品添加物やアレルギーを気にしてパンやお菓子を手作りすることを想定したレシピでしたが、最近では初めて米粉を使う人や忙しいけど手作りしたいと思う気持ちに応えて極力シンプルに。なくてもいいとわかった工程は省くようにしています。

オーブンがなくてもできるように、フライパン、炊飯器、蒸し器を使ったものや、レンチンレシピも始めました。せっかく米粉で作るので、レンチンでも野菜をすり潰して入れるなどして、ちゃんと栄養も考えています。電子レンジで調理のハードルをぐんと下げながらも、結果、卵と乳、白砂糖を使わないレシピも開発しました。

何でも作れる米粉のポテンシャル

企業や地域の商品開発・レシピ開発でも、「これを米粉で作れますか」という依頼が入ると燃えますね。海外の小麦粉のお菓子などは、「よし米粉でおいしく作ろう」と気合が入ります。米粉はパンや菓子に使うイメージが強いと思いますが、実はめんやおかず作りにも使える万能食材なんです。

米粉は、料理のとろみづけには片栗粉と同じように使えて、揚げ物の衣にするとカリっと揚がり、ふるわずにすぐに使えて、グルテンがないので混ぜすぎても大丈夫。パンも1次発酵だけなのでそれほど難しくありません。水に溶けやすいから調理器具を洗うのもラクなのがいいですね。

朝は手軽にレンチンパン、昼はうどん、お友だちが遊びに来たらピザやお菓子をおやつにして、夜はグラタンやハンバーグ。餃子や肉まんの皮、お好み焼きも米粉でできるんですよ。うちでは一日の食事を全部米粉で作っています。

今日からの米粉入門を、レシピで応援したい

米粉ブームに乗って使ってみたいと思う方に向けて、私のレシピ本『今日からはじめる米粉レシピ』では、タイトルのとおり書店で本を手に取って、帰りに材料を買ってすぐに作れるレシピを、パン、おかず、お菓子まで、この1冊に集めました。はじめたいと思ったその日からはじめられます。

米粉1袋を楽しく使い切る達成感

私もこの本を使って、子どもに「今日は何食べたい?」と聞いて、その日のごはんやおやつを決めて、読者の気持ちになってレシピを見ながら作っています。簡単なものは子どもと一緒に作れるし、私の友だちの家ではパパが作ってくれています。

米粉レシピは種類豊富にあるので、お菓子も料理もいろいろ作って、米粉一袋1㎏を使い切って是非、達成感を味わってほしいと思います。米粉レシピは本当に楽しくて、私は子どもの友だちが来たときなどは、まるで制作発表のように作ったパンやお菓子の感想を聞いたり、どれが売れ行きがいいかなと目を凝らしています。おいしく食べてもらえると作る側も楽しくなって、どんどんいろいろなレシピに挑戦したくなります。それが新しい食材、米粉の魅力ではないでしょうか。

高橋ヒロ氏

料理家・米粉専門家・フードコーディネーター
大学を卒業後、大手旅行会社、IT企業等に勤務する傍ら、料理を学びフードコーディネーターに。 自身の子どものアレルギーをきっかけに食育や米粉の活用に取り組むようになり、米粉料理の専門家として活動。 米粉のセミナーや講座、企業の商品開発、レシピ提供などを中心に活躍中。米粉レシピの著書多数。近著に『今日からはじめる米粉レシピ』(ワン・パブリッシング)など。

▼高橋ヒロオフィシャルブログ|今日からはじめる米粉レシピ
https://ameblo.jp/hiro-cafe-hiro/

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