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パンを焼くのは難しい? 米粉だったら実は簡単

10年前になりますが、体調不良がひどくて。もしかしたらと小麦を疑ってかかり、1週間食事から抜いてみたら、それまでの症状が改善されました。自分でアレルゲンを特定して以来、グルテンフリー生活を送っています。

米粉パン大失敗からの立ち直り

小麦を抜くと食生活がままならない状況になります。家族に米粉パンをつくってみたらと言われて、小麦粉を使っているものは米粉に置き換えてつくればいいだろうという発想にたどりつきました。ところが、パンを焼いたはずが餅にしかならなくて、この発想は封印していました。

それから1年後、なじみの料理屋さんの主催でパンをつくるイベントがあり、私は小麦がだめなので見学だけしてみて、初めてちゃんとしたパンのつくり方がわかったんです。それで開眼して封印を解いて米粉パンをつくり、三度目の正直で成功。米粉って意外と面白いと思って今に至ります。

米粉の特性に気づいて研究発表

参考にした本にも書かれていたとおり、小麦粉のパンは生地を二次発酵させ、膨らみを確認して、成形する必要がありますが、米粉パンは一次発酵だけでよくて、型に入れて焼くので楽なんです。それまでパンをつくったことがなく、焼型も何も持っていなかったので買おうとしたら高くて。大きいパンをつくって失敗したら嫌だし、成功しても食べきれないとか思って、横に並んでいたパウンドケーキ型が手頃な価格でサイズもちょうどよかったので、それを使って焼きました。

失敗した原因もわかりました。米粉には水を入れるとサラサラになるものとならないものがあって、サラサラにならない米粉にサラサラになるまで水を入れていました。それで、米粉といってもいろいろな特性があると思って、目についた米粉は片っ端から買って13種類の米粉でパンを焼いてみました。その研究成果を発表をしたのが、「ひつじとりっぷ グルテンフリーブック2020」(以下グルテンフリーブック)です。

研究発表でズボラ米粉生活のはじまり

普段執筆している少女まんが風の画風から離れ、旅行をテーマにした「旅する#ひつじですマガジンひつじとりっぷ」シリーズを制作。その5冊目でグルテンフリーの店の紹介や13種類の米粉パンを焼いた際の研究発表をしています。

ウェビナーと工場見学で米粉の理解深めました

米粉でパンを焼くために、パンの構成要素から調べ直したり、お米の性質も勉強して。当時は米粉の情報があまりなかったので、製粉会社さんや製粉機械の製造会社さんのホームページで情報収集しました。2019年に発刊して同人誌のイベントに出していますが、家族や友人に小麦がだめな人がいるからとプレゼントに買っていく人が多く、在庫がなくなりつつあります。

近年は情報を発信してくれる会社さんが増えているのがうれしいです。発刊後、製粉会社のウェビナーに参加したり、実際に工場見学をさせてもらう機会があり、話を聞いて理解できたこともあります。米粉と相性のいい膨張剤としてサイリウム(オオバコ)が出てきたり、よく行くグルテンフリー料理店からも情報が入ってきているので、情報をアップデートして2025年に出す予定だったグルテンフリーブックを前倒しで発刊するかもしれません。

ズボラ米粉生活、異色の米粉研究家の誕生

米粉パンというと、ていねいな暮らしや健康のためにつくる人が多く、グルテンフリーのお店もビーガンなど食事に気をつかう人のためというイメージがありますが、私は適当にパパッと食べられるものがほしいです。小麦アレルギーなので外食はほぼ無理だから自分でつくろうという発想なので。ケーキのレシピに卵を3個使って卵白を泡立てると書いてあれば、卵1つでどうすれば適当にできるかを考えます。

米粉だってちゃんと時短ができるんです。朝の5分で材料を混ぜてオーブンに放置して、焼いた米粉ドーナツを1日中食べています。そこに炒めたホウレンソウとベーコンをサンドすれば、おかずドーナツのできあがり。こういうタイプの米粉研究家はあまりいないと思うので、ぜひズボラでもいい米粉生活を広げていきたいです。

そもそも料理をつくるという時点で高いハードルをクリアしているので、自分で料理をする人が米粉に参入しやすいように、そのメリットとデメリットを明確にしたほうがいいと思っています。難しいことをわかりやすく伝えられるのが漫画です。

漫画家デビュー20周年、濃厚な米粉漫画をお届け

2023年にXで発表する漫画の第二弾を「米粉漫画にしよう」と手をつけ始めたのですが、思い切って米粉タイムズさんに持ち込みました。これからも米粉の情報をどんどん漫画に描いて発表していきます。ズボラ米粉めし漫画の構想もあります。

米粉の楽しさ、漫画にギュッと詰めて

今年は漫画家デビューして20周年。そのスキルを米粉漫画に使うのも何かの縁。米粉研究10年の節目に米粉タイムズで米粉漫画を描き下ろすことになりました。私がなぜ米粉を食べ始めたのか。米粉を使ってみてどうしたか。米粉のお店に行ってどうしたか。米粉の工場に行って感動したことなど、凝縮・圧縮・濃厚な4編をお届けしていきます。いざ、最初の1編をどうぞ。私のTwitterでも発表しています。

ひのもとめぐる氏

漫画家
2003年「ないしょのフォトグラフ」(なかよし新人まんが賞準入//講談社刊なかよし増刊号掲載)で漫画家デビュー。ティーンズラブ漫画を中心に携帯・WEBコミックを多数発表。元「まんが甲子園」出場ペン児で、現在はOG審査員を務める。代表作に「高梨くんの半分はサドでできています」(すみれ原案)など。自身の小麦アレルギーをきっかけに米粉研究を始め、その成果を「ひつじとりっぷ グルテンフリーブック」やSNSで発表。米粉漫画の制作に向けて取材・研究活動中。福岡県出身。

▼ひのこせんせい(公式X)
https://twitter.com/hinohinokoto

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