今回、3つの米粉を使ったレシピを提案していただきましたが、「賛否両論」でも米粉を使用することはありますか?
芋をマッシュしたものや蓮根餅、魚の唐揚げなどの揚げ物の衣として使うことがあります。衣に米粉を使うとカリッ、サクッとした食感になるので、柔らかい食材との対比を表現したい時に使うことが多いですね。また、お店では予約時にアレルギーや食べられない食材をヒアリングしているので、小麦アレルギーがある方やグルテンフリーを実践している方がいれば、小麦粉を使うメニューは米粉を代用して対応しています。
日頃から米粉を使用しているとのことですが、料理人目線で感じる米粉の魅力について教えてください。
今回提案したレシピのひとつでは、とろみつけで使用していますが、さらさらしていてダマになりにくいです。片栗粉でとろみをつけるには(60℃以上で)加熱する必要がありますが、米粉のとろみはそこまで温度が上がらなくてもついてくるので、作業効率が上がるというメリットもあります。粉特有の香りもなく、甘味があり、味がおいしいのも良いですね。仮にとろみをつけるときにダマになっても、お餅のようでおいしいんですよ。ダマが欠点にならないのも米粉の魅力だと思います。
使いやすくおいしい米粉ですが、普及しているとは言い難いのが現状です。米粉の普及には、どんなことが必要なのでしょうか?
まずは手に入りやすくすることが大切ですよね。それは、価格と流通の両面で必要。また、「〇〇には米粉が必要だよね」といった、米粉を使わないとできない料理、米粉を使った定番料理の開発も大切です。料理をしない人でも、「〇〇は米粉を使うとおいしい」と知られるくらいの認知度になると良いですね。
2023年に開催され大好評だった「米粉を使ったメニューフェア」が今年も開催されます。米粉に親しみのない飲食店もあるかと思いますが、アドバイスはありますか?
使ってこなかった食材を使う、新しいおいしさを実現するということは“自分の幅が増える”ということ。武器が増えるということなので、積極的にチャレンジしてほしいです。私自身も、知らない食材や使い方のアイデアに触れると『まだ知らないことがあったか…』と悔しい気持ちになることも。また、お店で食材の新しい食べ方などを提案していると『どうやって作っているの?』と聞かれることも多く、嬉しいですね。喜んで教えています。
米粉の魅力発信のために、飲食店だからこそできることを教えてください。
料理人は、料理の経験値や知識があるので、家庭では思いつかないような“真似したい”と思わせるような使い方やレシピを開発できるはずです。米粉の普及には定番料理の存在が必要だと考えていますが、飲食店から米粉がバズる定番料理ができてブームになるのが理想。そういった流れを作るのが、飲食店や我々プロの料理人の役割なのだと思います。私も、賛否両論ではただお腹をいっぱいにするのではなく、おいしさや楽しさ、想像以上の感動を与えられたらと思って料理を提供しています。
最後に笠原さん考案のレシピを見る方や、「米粉を使ったメニューフェア」に行こうと思っている方へメッセージをお願いします。
米粉を使った料理をあまり食べたことがないという方は、特に『こんな味なんだ』『こういう料理に使えるんだ』と、米粉の魅力が発見できるでしょう。ぜひ米粉のおいしさに探しに出かけてみてください。そして、ぜひ家でもレシピを見て作ってみてください。